ウクライナ戦争が起こした全ヨーロッパに障るエネルギー危機がフィンランドにも及ぼし、家庭も工業もその打撃を受けています。とはいえ、その中でもフィンランド企業がこれからの5年間でRDI投資を増やす予定があると報告され、イノベーションや今回紹介するようなリグニン(木質素)から出来たエコロジカルな新材料などのサステナブルな新技術がこれからも次々と開発されていくことでしょう。そのニュースも含めて、また7月~8月の注目ニュースピックアップを纏めて紹介したいと思います!
家庭も工業も苦しめる電力価格の記録的な高値
ヨーロッパ全体と同様、フィンランドもウクライナ戦争による記録的な電力価格の高値の影響を受けつつあります。家庭のレベルでは電気暖房の家が多くて、新規契約での電気料金が過去の何倍にもなっていますので、契約を更新する必要がある家庭への負担が重いです。また、一般的にもエネルギー価格の上昇によるインフレのため国民の購買力が著しく低下してきており、影響を受けていない人がまずいません。
一方、工業への影響も非常に大きいです。電力会社Lumoの事業停止で多くの消費者が困り、Fortumなどのエネルギー会社が膨大な損失を被り、国産の野菜の栽培量が縮小されるといったニュースが次々出ています。
一つの希望の光として、工事が出来上がったばかりの新しい原子力発電所「Olkiluoto 3」が挙げられています。この工事完成が予定より13年も遅れている大規模なプロジェクトがついに今年の夏に実験稼働の段階に入り、現時点では放射線および核安全局 (STUK)から60%での稼働の許可を得たところです。発電所の導入がスムーズにいけば今年の12月にフルパワーで稼働することになり、国内の電力危機を解決するとはいえませんが、かなり緩和すると期待されています。フルパワーで稼働する「Olkiluoto 3」はフィンランドで使用されている電力量の約14%を発電することになります。

Olkiluoto 3 原子力発電所の写真の出典, (c) TVO
電気自動車の急速充電設備メーカーKempower が著しい成長を遂げ、次は米国市場を目指しています
フィンランドのラハティ市に拠点を置いている電気自動車の充電設備メーカーKempowerの成長ぶりが注目を集めていますが、電気自動車のメガトレンドを反映しています。2021年12月にヘルシンキ証券取引所に上場したKempowerの売り上げがこの一年間で200%以上伸びており、従業員数も176人から260人に増えてきました。
既にヨーロッパで多くの国で活躍していますKempowerは今度、米国のマーケットに入ろうとしています。元々の計画では2025年に米国市場への進出を目指していましたが、予定を早めて今は2023年の年末までに米国の市場の一部を占めること目的として立てているそうです。
また、8月にニュースでは英国のスコットランドからも合計4百万ユーロを超える注文を受けており、スコットランドでKempowerの急速充電設備が来年導入される予定です。
合板製造を革命するかもしれない100%木から出来た粘着剤
建設材料としてよく使われる合板(ベニヤ板)ですが、実はその中には化石材料や毒性のホルムアルデヒドなどで出来ている粘着剤が入っています。そこで、フィンランドのアアルト大学の研究者がエコロジカルな100%木から出来た新しい粘着剤の開発で成功しています。その原料となる木からできる「リグニン」(「木質素」とも)で、合板の粘着剤だけではなく、エコロジカルなペンキやコーティング、樹脂なども製造可能だそうです。
この新しいサステナブルな化学技術を商品化する企業として「LignoSphere」 が設立されています。もしかしたら、これからは木造建設業界や家具業界に大きな変化をもたらすかもしれません。