SLUSH 2023

December 14, 2023

Author: Leena

こんにちは、インターンのあかりです。今回は、毎年フィンランドの首都ヘルシンキで開催される世界最大級のスタートアップイベント「Slush」について紹介したいと思います!

Slushとは?

Slushは2008年にヘルシンキでスタートし、当初は250人規模の一日限りのイベントでした。それが2018年からは毎年開催されるようになり、今では北欧最大のスタートアップイベントへと成長し、コロナ前の2019年には2万5千人もの参加者が来場しました。

Slushとは「水雪」を意味し、11月特有のフィンランドのどんよりとした天気を逆手に取ったネーミングとなっています。 Slushの特徴としては、学生主体の非営利団体によって運営されている点にあり、またバッジ交換、クローク等の会場運営は1500人以上のボランティアによって支えられています。今年は、11月30日と12月1日の2日間で開催され、スタートアップ、欧州や北欧のVC、投資家、大手企業、メディアと合計約1万3000人が一つの会場に集まりました。会場では、様々な企業のブースやステージプログラム、スタートアップと投資家の商談会やその他にもイベント前を含めた300を超えるサイドイベントが開催されなど、多くのスタートアップとベンチャーキャピタル(VC)の交流の場となりました。 Slushのマッチングツールを利用した商談会のリクエスト数は、なんと10万件を超えていたそうです。

(c) Petri Anttila

Slush 100

Slushで注目されているイベントの一つがスタートアップピッチコンペティションの「Slush100」です。優勝企業は、Accel、General Catalyst、Lightspeed Venture Partners、NEA、およびNorthzoneの5つのトップVCから100万ユーロの投資を受けることができます。当日会場では、セミファイナリストとして残った20のスタートアップがピッチを披露し、審査員とのQ&Aセッションを経て、ファイナリストのトップ3が決定しました。今回は、ファイナルに勝ち残ったトップ3社について簡単に紹介したいと思います。

1.Faircado

Faircadoは2021年にドイツで生まれたスタートアップで、先駆的なAIによって中古ショッピングを改革しています。顧客がオンラインで欲しいものをショッピングカートに入れるとそのアイテムに代わるより持続的な中古の代替品を自動的に顧客に示すブラウザ拡張機能を開発し、中古ショッピングを支援しています。このサービスにより、消費者は、時間やお金の節約、またCO2の削減をすることができ、より持続可能な循環型社会に貢献することを可能とします。

2.Congrify

Congrifyは、2022年にイタリアで生まれたスタートアップで、支払いデータを統合することで、小売業者が支払いデータをより良く理解し、新しい収益を生み、運用コストを削減して、支払いを向上させるための支援を行っています。 具体的には、小売業者向けに支払いアナリティクス、支払いサービス、統合と標準化、支払いインテリジェンス、キャッシュフローと調整、データの取り込み、ダッシュボード、取引等を提供しています。

3.Lifeyear

Lifeyearは、2021年にエストニアで生まれ、心臓病のない世界を創造するミッションを掲げた次世代のデジタルヘルスケア企業です。この企業は、個別化された心血管ケアの未解決な臨床ニーズに大規模に取り組んでいます。臨床ガイドライン、遠隔患者モニタリング、行動科学、リアルタイムデータ、および人工知能を統合することで、患者と臨床医に対し、心血管リスク状態を積極的にモニタリングし、制御し、逆転させるためのより優れたツールを提供しています。

2023年のSlush100では、 Faircado が1位を獲得しました!

(c) Petri Anttila

今年の感想

会場には、日本からもJetroが出展支援を行っている注目のスタートアップ8社の展示がありました。また、ステージでは元フィンランド首相のサンナ・マリン氏やDuolingoの共同創業者のセヴリン・ハッカー氏など多くの豪華なゲストがトークを披露し、どのステージも立ち見客がいるほどでした。2日目のイベント後は、イベント会場でアフターパーティが開催され、カラオケ大会や今年のユーロビジョンで2位を獲得したフィンランド代表の Käärijäがパフォーマンスを披露するなど大いに盛り上がりを見せました。今回私はボランティアとして参加しましたが、未来を担う最先端のスタートアップが集結し、世界中から集まった起業家や投資家からインスパイアされるだけでなく、起業家志望の学生や各分野で活躍するプロフェッショナルなボランティアの方とも交流することができ、とても充実したイベントとなりました。来年のSlushにも期待です!

ハジメのレーナとジェトロブースで展示したスタートアップKitafukuさん。

 

 

 

 

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